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退職後に引き続き傷病手当金を受給する際の注意点

文書作成日:2023/02/09

 坂本工業では、今月末に、私傷病により退職する従業員がいる。現在、傷病手当金を受給していることから、退職後も引き続き受給できるか確認することにした。

 私傷病で休職している従業員から、復帰の目途が立たないことから、今月末で退職したいという連絡がありました。現在、傷病手当金を受給しており、引き続き傷病手当金が受給できるのか本人が心配していたのですが、このまま受給できるのでしょうか?

 既に傷病手当金を受給している方が、退職後も引き続き受給するためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  1. 被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間があること
  2. 資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること

 1の被保険者期間についてはすでに1年以上あります。2はどのような意味でしょうか?

 そもそも傷病手当金は、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 病気やケガで療養中であること
  2. 仕事に就くことができないこと(労務不能)
  3. 4日以上仕事を休んでいること
  4. 給与の一部または全部が支払われていないこと

 退職日に傷病手当金を受けていているか、これらの条件を満たし傷病手当金を受けられる状態にあるか、という意味になります。

 退職後も引き続き傷病手当金を受け取るならば、退職日にこれらの条件を満たしていなければならないわけですね。

 はい。具体的には退職日に荷物整理や引継ぎのために出勤するということがありますが、退職日に出勤してしまうと、2の「仕事に就くことができないこと」の条件を満たさず、退職後に傷病手当金を受けることができなくなります。

 退職日に出勤したら、傷病手当金が受けられなくなるのですね。

 これは、医師が労務不能と証明していても仕事ができる状態になったと判断されるからです。

 なるほど。今回のケースは既に傷病手当金を受給していましたが、傷病手当金を受給しないで年次有給休暇(以下、「年休」という)を取得し、退職となった場合は、どのような取扱いになるのでしょうか?

 連続した3日間のいわゆる待期期間には年休や公休日も含んでカウントするため、例えば退職日まで連続して年休で3日間休み、この待期期間3日に加えて連続した4日目(退職日)も年休を取得したのであれば、退職後に傷病手当金を受給することができます。ちなみに、4日目は年休で給与が支払われているため、通常、傷病手当金は支給されないことになります。

 傷病手当金を受け取る権利はあるけど、給与が払われているため支給されないということですね。

 傷病手当金が支給される期間が少し前に変わりましたが、退職後は、残りの期間について傷病手当金を受給できるという理解でよいでしょうか?

 はい、支給された期間を通算して1年6ヶ月となりました。ちなみに、この1年6ヶ月の算出の仕方は、支給開始日により傷病手当金の総支給日数が決まります。例えば以下のようになります。

 なるほど。変わる前は暦で1年6ヶ月ということでしたが、支給された期間を通算するため、日数の換算が必要になるということですね。そして、さらに支給開始日によって総支給日数が異なるということ、従業員に伝えたいと思います。

>>次回に続く


 私傷病による休職に関連して退職した場合、退職後もしばらくの間、働くことができないことがあります。その際には、雇用保険の基本手当について延長申請をすることができます。通常の基本手当の受給期間は退職日の翌日から1年間ですが、基本手当は働く意思と能力があることが前提になっているため、病気等で働けない状態が続くのであれば延長の手続きをしておくことでその期間を最大4年間まで延長することができます。
 この延長の手続きは退職日の翌日から30日経過した後となり、手続きはなるべく早く行うことをお勧めしますが、延長された期間の最後の日までであれば可能です。

■参考リンク
協会けんぽ「傷病手当金について」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307/
ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。