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2023年度の雇用関連助成金

 助成金制度は年度単位で予算が立てられているものが多く、年度初めに助成金の創設・改廃が行われるものが多くあります。今回は、今年度に中小企業が比較的活用しやすい注目の助成金をいくつかご紹介します。

 人材開発支援助成金は、従業員に対して計画に沿って実施した職業訓練等の経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。この助成金には複数のコースが設けられていますが、「人材育成支援コース」の「人材育成訓練」は、職務に関連した知識や技能を習得させるためにOFF-JT を10 時間以上行った場合に、助成金が支給されます。

  1. 主な要件
     対象となる事業主の主な要件は以下の通りです。
    • 職業能力開発推進者を選任していること。
    • 事業内職業能力開発計画を作成し、周知していること。
    • 事業内職業能力開発計画に基づき職業訓練実施計画届を作成し、周知していること。

     支給対象となる労働者は、職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載されている雇用保険の被保険者であり、訓練を受講した時間数が実訓練時間数の8割以上であることなどの要件が設けられています。

     対象となる訓練については、事業内訓練の場合、職業訓練の科目・職種等の内容について専門的な知識もしくは技能を有する指導員または講師とされ、その分野の職務にかかる指導員・講師経験が3年以上の者、その分野の職務にかかる実務経験(講師経験は含まない)が10年以上の者などの要件が設けられています。
     事業外訓練の場合、公共職業能力開発施設、職業能力開発総合大学校など、社外の教育訓練機関に受講料を支払い受講する訓練が対象になります。

     また、eラーニング・通信制による訓練も助成金の対象になりますが、対面により実施される訓練とは支給要件上、取扱いが異なります。例えば、訓練時間については、実際の訓練時間ではなく、受講案内等に記載されている「標準学習時間」や「標準学習期間」で判断されます。

  2. 対象となる経費等
     支給対象となる経費は以下のとおりです。支給申請までに対象経費の全額を会社が負担していることがわかる書類が必要です。

    [事業内訓練]
     部外の講師への謝金・手当
     部外の講師の旅費
     施設・設備の借上費
     学科や実技の訓練等を行う場合に必要な教科書・教材の購入費 など
    [事業外訓練]
     受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代等、あらかじめ受講案内等で定めているもの

     これらの経費のほか、訓練期間中の所定労働時間内の賃金についても、助成の対象となります。なお、所定労働時間外・所定休日(予め別日に所定休日を振り替えた場合は除く)に実施した訓練は、賃金助成の対象外になります。

  3. 助成額・助成率
     助成額・助成率は以下のとおりです。

    [経費助成率] ( ) 内は大企業
     雇用保険被保険者(有期契約労働者等を除く。)の場合:45% (30%)
     有期契約労働者等の場合:60%
     有期契約労働者等を正規雇用労働者等へ転換した場合※:70%
     ※有期契約労働者等について「正規雇用労働者、勤務地限定正社員、職務限定正社員または短時間正社員への転換措置」または「有期契約労働者の無期契約労働者への転換措置」を講じた場合。
    [賃金助成] ( ) 内は大企業
     1人1 時間当たり760(380) 円

     なお、経費助成については実訓練時間数の区分に応じて限度額が設定され、賃金助成についても1人1訓練あたり1,200時間が限度時間となるなど、様々な制限が設けられています。

 また、今年度より「生産性要件」が廃止され、「賃金要件」と「資格等手当要件」が新設されました。そのため、「賃金要件」または「資格等手当要件」のいずれかを満たした場合は、別途申請を行うことで、経費についてはプラス15%等の加算分が追加で支給されます。

 両立支援等助成金は、職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくりを行う企業を支援するものです。こちらも様々なコースがありますが、2022年10月より改正育児・介護休業法により新設された出生時育児休業の取得に労働者が関心が寄せられている現状もあることから、以下では出生時両立支援コースをとり上げます。

 この出生時両立支援コースは、中小企業のみを対象とし、男性労働者が育児休業を取得しやすいように雇用環境整備や業務体制整備を行った上で、男性労働者が育児休業を取得した場合に助成金が支給されるものです。「男性労働者が出生時育児休業を取得した場合(第1種)」と「男性従業員の育児休業取得率が上昇した場合(第2種)」の2段階に分かれ、それぞれの主な支給要件と支給額は以下のとおりです。

  1. 第1種(男性労働者の出生時育児休業取得)
    (1)主な要件
    • 育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること。
    • 育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、その規定に基づいて業務体制の整備をしていること。
    • 男性労働者が子どもの出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得すること。
      ※所定労働日が4日以上含まれていることが必要。

    [代替要員加算]
     男性労働者の育児休業期間中の代替要員を新たに確保した場合に加算して支給されます。要件として、代替要員を確保した時期が、対象労働者の配偶者の妊娠の事実等を、会社が知った以降であることなどの要件があります。
    [育児休業等に関する情報公表加算]
     情報公表加算は今年度より新設されたもので、男性の育児休業等取得率、女性の育児休業取得率、男女別の育児休業取得日数の3点を「両立支援のひろば」サイト上で公表することが必要です。

    (2)支給額
     20万円
     代替要員加算 20万円(代替要員を3人以上確保した場合には45万円))
     育児休業等に関する情報公表加算 2万円
     1事業主1回のみ支給となります。

  2. 第2種(男性労働者の育児休業取得率上昇)
    (1)主な要件
    • 第1種の助成金を受給していること。
    • 育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数行っていること。
    • 育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、その規定に基づいて業務体制の整備をしていること。
    • 第1種の申請をしてから3事業年度以内に、男性労働者の育児休業取得率が30%以上上昇していること。または、第1種の申請年度に子どもが出生した男性労働者が5人未満かつ育児休業取得率が70%以上の場合に、その後の3事業年度の中で2年連続70%以上となったこと。
    • 育児休業を取得した男性労働者が、第1種申請の対象となる労働者の他に2名以上いること。

     上記の下線部については、今年度より拡充されました。男性労働者の育児休業取得者が少ない場合、従来からの要件(30%以上上昇していること)を満たすことが難しいケースがありましたが、拡充された要件(2年連続70%以上)に該当すると助成金の支給対象となります。

    (2)支給額
      1事業年度以内に30%以上上昇した場合:60万円
      2事業年度以内に30%以上上昇した(または連続70%以上)場合:40万円
      3事業年度以内に30%以上上昇した(または連続70%以上)場合:20万円
      
     改正育児・介護休業法における雇用環境整備の措置では、4つの選択肢のうち少なくとも1つ(労使協定を締結する場合は2つ)を講じることが義務とされていますが、この助成金を受給するためには2つ(労使協定を締結する場合は3つ)以上の措置を講じる必要があり、法令を上回る取組みが求められます。

  

 助成金には予算額が設けられているため、いざ活用しようと考えたときに、受付が終了している可能性があります。活用にあたっては、最新情報を確認しましょう。

■参考リンク
厚生労働省「人材開発支援助成金
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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